かつて新築至上主義だった日本でも、中古物件の流通量の増加やリフォーム技術の進歩により「リフォームを前提に中古マンションを購入する」という選択が注目されています。
とはいえ、スペックを追い求めればその分リフォーム費用がかさむため、限られた予算の中で理想の住まいに仕上げていくことは容易ではなく、想定費用を大きくオーバーしてしまうことがあります。
せっかく購入費用を抑えるために中古物件を選択したにも関わらず、結果的に新築物件よりも費用がかかってしまった、というケースも少なくないのです。
このようなリスクを避けるためには、物件探しを行う前に必要なリフォームの内容や費用相場を知っておくことが重要です。
リフォーム費用の相場は、築年数ごとでイメージしておくと良いです。
- 築20年:200万円程度
- 築30年:260〜420万円程度
- 築40年:600〜1,000万円程度
上記の費用相場は、一般的な70㎡のファミリータイプの部屋をイメージしています。
部屋の大きさや設備機器のグレードによって金額は異なりますが、まずはこの相場感を認識しておき、物件価格や諸費用を含めた購入総額を考慮しながら物件探しを行うことがおすすめです。
中古マンションのリフォームにかかる費用相場とは?
リフォームに必要な費用は「どこまで手を加えるか」によって大きく異なります。
そのため、リフォームを検討する際には、手を加えるべき優先順位をつけ、購入予算と相談しながら計画する必要があります。
設備機器は経年とともに劣化していくため、築年数が古くなるほど手を加えるべき箇所は多くなります。
築年別でポイントを見ていきましょう。
築20年の場合
築20年の場合、水回りの設備機器の交換が必要です。
商品によって耐用年数は異なりますが、キッチンや洗面、バスルームといった水回り機器はおおむね20年程度が経過した頃から故障や不具合が多くなると言われています。
この水回りを全て交換した場合、一般的な費用相場は200万円程度です。
金額的には非常に大きくなりますが、水回りは実生活に最も影響を与えるため、リフォームを最優先すべき箇所と言えます。
築30年の場合
築30年の場合、水回りに加えて壁紙やフローリングなどもリフォームの検討が必要です。また、この頃に建築されたマンションは、間取り規格が古いために現在の生活様式に馴染まない物件も多く、対面型キッチンへの移設や、和室を洋室にするなど、空間変更を検討する方も多いです。
ただし、これらは生活するうえで直ちに交換が必要ではないため、予算に応じて選択すると良いでしょう。
なお、それぞれのリフォーム費用は下記を相場として覚えておきましょう。
- 壁紙交換:60万円程度
- フリーリング交換:70万円程度
- キッチン移動:25万円程度
- 和室から洋室へ変更:55万円程度
築40年の場合
築40年の場合は、再度水回りの交換が必要であることに加え、配管の劣化が表面化する時期です。配管の交換はほぼ全ての壁や床を剥がす必要があります。いずれ配管交換が必要であるならば、個々のリフォームではなく、コンクリート躯体まで全ての壁や床を撤去してから新たに内装を作り直す「スケルトンリフォーム」の検討がおすすめです。
スケルトンリフォームは大掛かりな工事となるため、下の表の様に部屋の大きさや施工会社によって金額が大きく異なります。そのため、リフォーム内容な業者を決定する際はより慎重な比較検討が必要です。
部屋の広さ | 工務店 | 中堅業者 | 大手業者 |
---|---|---|---|
2LDK(60㎡程度) | 550万円台~ | 600万円台~ | 900万円台~ |
3LDK(70㎡程度) | 750万円台~ | 800万円台~ | 1,050万円台~ |
業者によって扱う設備機器の商品や提案内容に特徴があります。また、実際に施工がきちんと行われるかが最も重要であるため、金額面だけで良し悪しを判断せず、担当者の雰囲気やネット上の口コミなどもくまなくチェックし、業者選定を行うことが良いです。
リフォーム費用を抑える方法3つ
リフォームを検討するうえでは、費用を抑えるために知っておきたいことが3つあります。
リフォーム業者の掛け率を確認しておく
リフォームで使われる設備機器や部材は、リフォーム業者が独自に製造しているものではなく、それぞれメーカーから仕入れた商品を使用しています。
メーカー側としては、なるべく多く仕入れてくれる業者に対しては、その発注に対して割引して納品することが一般的です。この割引率のことを「掛け率」と言い、掛け率が大きい業者であるほど、設備機器の金額も抑えることができ、結果的にリフォーム費用も安くなる可能性があります。
ただし、大手業者は施工件数が多いため、この掛け率も大きくなる一方、工務店や中堅業者と比べると施工費自体の金額が高い場合が多いです。
そのため、設備機器の値段は抑えられたとして、必ずしもリフォーム総額が安くなるわけではないため注意が必要です。
自分で部材調達する
リフォームに必要な部材をご自身で調達することも一つの方法です。
お近くのホームセンターや家具店などで既製品や部材を購入し、それを使用してもらうことで、業者を通じて部材を仕入れるよりも安くできる可能性があります。
ただし、部材の自己調達についてはN Gな会社も多く、地元の工務店など融通の効く業者に発注する場合に有効な方法と言えます。
リフォーム済み物件を検討する
現在のマンション市場では、リフォーム済み物件が非常に多く流通しています。リフォーム費用を抑えるという意味では、このリフォーム済み物件を検討することも有効な方法です。
中古物件として売り出す場合でも、設備の劣化や故障が表面化したままでは買主がなかなか現れない可能性があります。そのため、売却しやすくすることを目的に、売主が先行投資している物件も多いのです。
また、フルリフォームされた物件も多く流通しています。これらの多くは、不動産会社が物件を買い取った後、リフォームを施して再販している物件であり、個人がリフォームをするよりも効率よく低価格でリフォームを実施している場合が多いです。
「それほどオーダーメイドにこだわりが無い」という方にとっては、リフォーム済みの物件は手間もかからないうえ、即入居もできるためおすすめです。
そもそもリフォームとは?
「リフォーム」とは、「劣化した部屋の一部もしくは全体を、新築当時の状態に回復させること」を指します。
これに対して最近よく聞かれる「リノベーション」とは、「新築当時よりも、付加価値をプラスする内装工事のこと」を言います。したがって、先ほど紹介したスケルトンリフォームは、一般的にリノベーションの範囲と言えます。
しかしながら、この2つの違いに明確な定義は無く、スケルトンで無くても一部付加価値が付いていればリノベーションと謳っている不動産会社もあるため、リノベーション済み物件であっても想定するリフォーム内容でない可能性があるため注意が必要です。
リフォームとリノベーション2つの違いとは?
- リフォーム…劣化した部屋の一部もしくは全体を、新築当時の状態に回復させること
- リノベーション…新築当時よりも、付加価値をプラスする内装工事のこと
おわりに:コスパ良くリフォームするなら築年別に検討しよう
リフォームを前提として中古マンションを検討する際は、予算オーバーとならないように、どの程度の築年数でどのくらいのリフォーム費用が必要か知っておき物件探しをすることが重要です。
築年別のリフォーム相場は以下をイメージすると良いでしょう。
- 築20年:200万円程度
- 築30年:260〜420万円程度
- 築40年:600〜1,000万円程度
リフォームを行う際は、金銭面だけでなく「きちんと施工されること」が最も重要です。リフォーム業者を決める際は、見積もり金額の多寡だけではなく、担当者の質や会社の評判などもチェックし慎重に選定しましょう。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。