住宅ローンを利用して購入した場合、一定の要件を満たすことで「住宅ローン控除」が適用されます。
この住宅ローン控除制度の適用を受けるためには、購入翌年に確定申告をする必要がありますが、ここで登場するワードが「特定取得」と「特別特定取得」です。
住宅ローン控除は、取得条件が特定取得・特定特別取得に該当した場合、最大控除額や控除期間の優遇を受けることができる制度設計となっています。
本記事でお伝えする主な内容は以下のとおりです。
- 消費税増税にともなって「特定取得」と「特定特別取得」の概念ができた
- 「特定取得」は消費税8%と10%の住宅取得
- 「特別特定取得」は10%かつ入居要件を満たす住宅取得
- 特定取得・特別特定取得に該当すると年間最大控除額や控除期間が増える
- 税制改正によって特別特定取得の入居期限が延長される可能性がある
現在は国の低金利政策によって、以前と比べて住宅ローンを非常に低い金利で組むことができる状況です。現行の住宅ローン控除制度は、年末残高の1%を控除する仕組みであるため、ローン控除を利用することができれば、住宅取得後に大きな金銭的メリットを享受することができます。
今回は住宅ローン控除に関わる「特定取得」と「特別特定取得」について、その仕組みや注意点を詳しく解説していきます。
「特定取得」とは?
「特定取得」とは、消費税8%・10%で住宅を取得することを言います。
日本における消費税は従前5%でしたが、2014年4月に8%、2019年10月に10%と段階的に増税されています。
特定取得は、この増税の影響による過度な住宅の買い控えを防止するために生まれた概念です。
そして、住宅の取得条件が特定取得に該当する場合、住宅ローン控除における最大控除額が増額される仕組みとなっています。
「特別特定取得」とは?
「特別特定取得」とは、消費税10%かつ入居要件を満たして住宅を取得することを言います。
ここで言う入居要件は、2020年12月31日までの入居を指しています。
ただし現在は、新型コロナウィルスの影響によって入居が遅れた場合、2021年12月31日までに延長される特別措置が取られています。
なお、2020年12月21日に閣議決定され、翌年1月29日に国会に提出された「令和3年度税制改正法案」では、この入居要件について2年間延長し、2022年12月31日までを期限とすることが記載されています。
この法案は3月中に国会で可決され、2021年4月1日から施行される見込みです。
特定取得・特別特定取得の物件の住宅ローン控除について
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して一定要件を満たした住宅を購入した場合、年末のローン残高×1を所得税額(および一部の住民税)から控除する制度です。
この住宅ローン控除において、特定取得・特別特定取得に該当する場合は、年間最大控除額や控除期間が優遇される仕組みとなっています。
それぞれの詳細をみてみましょう。
特定取得に該当する場合
特定取得に該当する場合、年間最大控除額は40万円にとなります。(認定住宅等の場合は50万円)
増税前や非課税の住宅を購入した場合は年間最大控除額が20万円となっており、その額はなんと2倍です。
控除期間は従前と変わらず10年間ですが、総額では最大で200万円と非常に大きな違いとなります。
なお、ここでの控除額は、あくまで「最大」であることに注意しましょう。
収入額によって税額が最大控除額に満たない方や、そもそもローンの金額が4,000万円に満たない場合は、実質の金利負担分が控除額となります。
特別特定取得の該当する場合
特別特定取得に該当する場合は、最大控除額40万円に加えて控除期間が10年から13年に延長されます。ただし、11年目以降の控除額は、下記計算で算出されたいずれか少ない方が適用されます。
- 年末ローン残高×1
- 建物の取得価格(上限4,000万円)×2%÷3(最大26.66万円)
前提条件として少ない方が適用されるため、仮にローン残高×1が30万円であったとしても11~13年目の最大控除額は26.66万円となります。
なお、先述したように、この優遇制度は2020年12月31日まで(税制改正された場合2022年12月31日まで)の入居しなければ適用さないことには注意が必要です。
特定取得と特別特定取得が優遇される理由
住宅は、一般消費者が一生に購入する商品の中で一番大きな買い物と言われています。
住宅が売れることは、単に不動産会社や建築会社の売り上げや利益に留まらず、新規の電力や通信、家具家電といったさまざまな商品・サービスが供給されることで、経済に大きな刺激を与える要因となっています。
逆を言えば、住宅供給が止まってしまうと、国内の経済活動全体が悪い影響を受けてしまうのです。
消費税を増税することは国の社会保障などを補うために必要とされた一方で、消費税が増税されて住宅の買い控えが起きてしまうと、重大な景気悪化を招いてしまう可能性があります。
そのため、新築住宅や付加価値がついた法人売主の住宅については、住宅ローン控除の優遇によって供給を促進する狙いがあるのです。
特定取得にならないケースもあるので注意
増税後の住宅購入であっても、物件の売主が個人である場合は特定取得になりません。
売主が不動産会社などの法人である場合は、中古物件であっても建物に対して消費税が課せられますが、個人の場合は非課税であるため特定取得には該当しないのです。
したがって、個人売主の中古物件の場合は、最大控除額が20万円、控除期間が10年間となります。
また、そもそも住宅ローン控除には、築年要件と面積要件があります。
木造などの非耐火建築物で20年以内、鉄筋コンクリート造などの耐火建築物で25年以内、かつ建物の床面積が50㎡以上でなければ住宅ローン控除に対象にはなりません。
ただし、この面積要件については、令和3年度税制改正により40㎡に緩和される予定となっています。
住宅ローン控除を利用する際は、物件が要件をクリアしているか否かも必ずチェックしましょう。
▼住宅ローン減税が改悪される?!詳しくはこちらの記事をご覧ください。
住宅ローン減税が改悪されるのはいつ? 改正内容や問題点を解説
おわりに:住宅ローン控除制度は「特定取得」や「特別特定取得」に該当すれば控除額や期間が優遇される
住宅ローンを利用して購入した場合、一定の要件を満たせば、購入翌年に確定申告をすることで「住宅ローン控除」を利用することができます。
そして、住宅ローン控除制度では、取得条件が「特定取得」や「特別特定取得」に該当することで、最大控除額や控除期間が優遇される仕組みとなっています。
「特定取得」は消費税8%と10%で住宅を取得することを言い、最大控除額が従来の2倍である40万円に増額されます。
また、「特別特定取得」とは、消費税10%かつ入居要件を満たして住宅を取得することを言い、最大控除額が40万円であることに加え、控除期間が従来の10年間から13年間に延長されます。
なお、増税後の住宅購入であっても、物件の売主が個人である場合は非課税であるため特定取得には該当しません。
また、住宅ローン控除は、そもそも建物の築年数や床面積が一定要件をクリアしていなければ適用さないため注意が必要です。
住宅ローン控除制度の利用を考えている方は、物件が要件をクリアしているか否かも必ずチェックしましょう。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。