「住宅ローンを組んで家を買いたいと思っているけれど、他に借金があっても借りることができるのか」という心配をしている方もいるのではないでしょうか。結論から言えば、借金があっても、住宅ローンを利用することはできます。とはいえ、銀行の審査を通過できなければなりません。そのためにも、銀行がどういった目線で審査を行っているのかを知っておきたいところです。
そこで本稿では、借金があった場合に、住宅ローンの審査で銀行がどういったところに注目しているのか、消費者金融を利用している場合の影響はあるのかなどについて解説します。
借金があっても住宅ローンが組める?
結論から言うと、借金があった場合でも住宅ローンを組むことは可能です。しかし、銀行の審査を通過しないと住宅ローンを組むことができないわけですし、希望通りの金額が借りられるかどうかという問題もあります。まずは、銀行が行っている住宅ローン利用者の審査内容について知っておきましょう。
住宅ローンの審査基準の詳細は公表されていませんが、全銀行共通の審査基準があるわけではなく、各行で異なる基準を定めています。ただ、いずれの銀行でも「返済負担率(返済比率)」を重点的に見ています。
返済負担率とは、「収入に対する返済額の割合」を計算したものです。「返済額÷収入」で求めることができるもので、年収500万円で1年間の返済額が100万円の場合、返済負担率は20%(100万円÷500万円)となります。
収入に対する返済額の割合が高いと返済負担率は高くなり、逆の場合は返済負担率が低くなります。つまり、返済負担率が低ければ、「無理なく借金を返済できる可能性が高い(=返済してもらえる可能性が高い)」と判断できるのです。
銀行が審査でチェックする「借金」とは、借りようとしている住宅ローンだけを指すわけではありません。消費者金融やカードローン、それ以外に携帯電話の本体代金など分割払いで支払っているものも含めて計算されます。そういった現在の借金と住宅ローンの合計返済額について、無理なく返済できるかどうかをという視点で審査されるのです。
現在どれくらいの借金があるかについては、住宅ローンの申し込みをする際に告知しなければなりません。ただし、住宅ローンの審査を通せるようにしようと、嘘の申告をするのは絶対にいけません。銀行は信用機関に問い合わせて、住宅ローンを申し込んだ人の借り入れの状況を全て確認しています。告知内容が虚偽であることがわかると、明らかに心証は悪くなるでしょう。必ず正しい情報を告知するようにしましょう。
借金返済の遅延の経験がある場合はどうなる?
借金の返済が遅れてしまった経験がある場合は、どうしても審査には不利に働いてしまいます。ただ、通常は返済遅延の履歴は5年で消去されるため、直近5年で返済の遅延がなければ問題はないでしょう。また、返済が遅れた期間が短ければ、そんなに大きな問題にはならないかもしれません。
何度も延滞を繰り返していたり、長期間の返済遅延があったりする場合は問題です。そのようなケースでは個人信用情報に「異動」と記録されるのですが、その場合は、まず住宅ローンの審査は通らないでしょう。「3か月以上の遅延がある」、「1~2か月の遅延を何度もしている」といった場合に、「異動」と記録されるようです。
過去の返済状況が原因で銀行の審査に通過できなかった場合でも、保証会社を付けることで住宅ローンを利用できるケースもあります。しかし、信用情報がよくない人の保証をすることになるため、保証料はかなり高くなってしまいます。
もし、自分の信用情報に心配がある場合は、個人信用情報機関に問い合わせて確認することも可能です。
借金を住宅ローンに組み込んで返すことはできる?
原則として、住宅ローンは「家を購入する目的」で使うものであり、目的外の利用は禁止されています。住宅ローンとして借りているのに、そのお金を借金の返済に使ったことが発覚すると、利用条件に違反したことを理由に一括返済を要求されてしまう可能性があります。最悪の場合は、住宅ローンの利用が詐欺だったと判断されるケースもないとは言い切れません。
一方で、おまとめローンなど、「他の借金とまとめることが前提になっているローン」であれば、借金を住宅ローンに組み込むこともできるでしょう。ただ、メガバンク、上位の地方銀行、ネット銀行では、そのような住宅ローンを提供している所はありません。信用金庫やノンバンクなどでは、他の借金とまとめる住宅ローンを提供しているところもあるようです。
消費者金融が住宅ローンに及ぼす影響とは
過去に消費者金融を利用していたことは、住宅ローンの審査に影響するのでしょうか。住宅ローンの審査は、過去にどのような借金をしていたかを確認するのが目的ではなく、借金の返済や分割払いの支払いについて、「深刻な滞納をしたことがないか」を確認しているものです。そのため、過去に消費者金融を利用した履歴があったとしても、滞納せずに返済をしていれば、基本的には問題はないでしょう。
しかし、消費者金融は利用目的が自由な借金であり、どのような目的でも借りることができるものです。そのため、マイカーローンや教育ローンといった利用目的がはっきりしている借入と比べると、審査によくない影響があるというケースもあるかもしれません。
審査は厳しくなりますが、借金があっても住宅ローンは借りられます
借金があっても住宅ローンを利用することは可能ですが、審査を通過することができるか、希望通りの金額を借りることができるかという意味では、借金がないに越したことはないでしょう。
住宅ローンを利用する前に借金を可能な限り返済しておくこと、新たに借り入れをしないようにすることが大事です。すでに借金があり、全額返済しきることができない場合でも方法はあります。返済負担率を下げるために、住宅ローンの借入金額を小さくしたり、返済期間を長くして毎月の返済額を小さくしたりするなどの対応方法が考えられます。
ファイナンシャルプランナー横山さんコメント
借金があっても、それだけで住宅ローンを組めなくなるわけではありません。きっちり返済してもらえる見込みがあるかという観点から、金融機関がOKを出せば、住宅ローンを利用することができます。
しかし、一番注意しておきたいのは、「銀行が貸してくれるかどうか」ではなく「将来にわたって、自分が無理なく返済していけるか」でしょう。銀行はお金を返してくれさえすれば問題ありませんが、利用者側としては、住宅ローンの返済に振り回されて、いろいろ我慢を強いられる生活は望んでいないでしょう。
「一生で一番高い買い物」と呼ばれるほどのマイホームですから、無理のない返済金額になっているか、理想的には「余裕をもって返済できる金額か」という点を意識して利用しましょう。
この記事を執筆した人
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト、MBA(経営学修士)
横山 研太郎
ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそ、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案することができることを強みとする。保険だけ、投資だけに片寄ることなく、今の生活も将来の生活も可能性に満ちたものにするようアドバイスすることを心がける。