不動産業と宅地建物取引業は、同じものではありません。
不動産業としては売買や仲介、賃貸として土地や住宅、ビルを扱うもの、管理として分譲マンションや賃貸物管理を行うものなどさまざまな業種が含まれます。
宅建業は、不動産業の中でも売買や仲介といった取引だけを扱っています。
宅地建物取引業とは、宅地建物の売買を当事者として行い売買や賃借の代理、仲介をすることについて「業」としています。
「業」とは?
この「業」とは、不特定多数の人に対して繰り返し取引を行うことです。
企業が社員のためだけに宅地建物の斡旋を行うならば、社員のためだけというように特定の人を対象にしているわけですから、宅建業には該当しません。
また、大家さんからの依頼を受けて入居者募集の仲介にあたることは宅建業ということになりますが、自分で行う賃借である貸しビルやアパート経営などは、宅建業の業務ということにはなりません。
宅建業は、宅地建物取引業法によって国土交通大臣か都道府県知事による免許を受けた人が営むことのできるものです。
2つ以上の都道府県に事務所を設置している場合の免許権者は国土交通大臣、1つの都道府県に事務所を設置している場合の免許権者は都道府県知事となっています。
また、営利目的としているかどうかは問われません。
宅地建物取引士は不動産取引にかかわる知識を持っている流通の専門家
宅地建物取引主任者とは、不動産取引にかかわる知識を持っている流通の専門家です。
宅地建物取引業法によって定められている国家資格です。
不動産の取引においても特に重要な物件や契約内容などに関する説明である重要事項説明、賃貸借の契約書への記名、捺印は宅地建物取引主任者しか行うことができないとして決められています。
また、金融業界でも不動産を担保とした融資が行われる場合には、宅地建物取引主任者が必要とされます。
ですから住宅を購入する契約が結ばれる前に必ず行われる重要事項説明は、宅建建物取引主任者以外の人が担当すると法律に違反しているということになります。
不動産業と宅地建物取引業の違いは?
不動産売買を行う事業者を不動産業者、または宅地建物取引業者と呼んでいます。
それぞれ定義が異なり、不動産業は売買・仲介・賃貸・マンションなどの管理といった業務が含まれており、不動産に関する取引全般を行う業種です。
宅地建物取引業は宅建業と略して呼ばれることが多く、不動産業の中で主に売買・仲介・賃貸の代理や仲介を行う業種であり、不動産業に含まれるひとつの業種が宅建業ということになります。
宅地建物取引業の免許
宅建業を営むには国土交通大臣、または都道府県知事の免許を受けなければなりません。
宅建業で認可される国土交通大臣と都道府県知事の免許の有効期間は共に5年間となっており、いずれの免許も日本全国で有効となります。
免許は宅地建物取引業法に該当する業務を行う場合に必要となりますが、賃貸ビル・マンション・アパートの所有者は免許は必要ありません。
所有者から依頼を受けた不動産業者が賃貸の仲介を行う場合に宅地建物取引業の免許が必要となります。
宅地建物取引業の免許の違い
許可権者が国土交通大臣の場合、2つ以上の都道府県に事務所を設置することができますが、許可権者が都道府県知事の場合は事務所の設置は1つの都道府県に限定されます。
都道府県知事許可の免許を所持していて1つ事務所を構え、もう1つ事務所を設けたい場合は国土交通大臣認可の免許を取り直す必要があります。
法令違反が生じた場合
宅地建物取引業法に抵触する取引が行われた場合、業務改善指示が行われたり、場合によっては業務停止処分や免許取消処分がくだることがあります。
宅地建物取引主任者
宅地建物取引主任者は宅地建物取引業法に基づいた国家資格であるため、宅地建物取引業の専門家としての資格を有していることになります。
宅地建物取引主任者はひとつの事務所に5名につき1名置くことが義務付けられています。
例えば6名が宅建業に従事している事務所なら、2名の宅地建物取引主任者が必要となります。
8種制限とは
不動産業と宅地建物取引業の違いを理解したうえで、8つの制限についても確認しておきましょう。
宅地建物取引業者が売主となる場合、宅地建物取引業法において「自ら売主制限(8種制限)」が定められています。
8種類の制限は宅地建物取引業者自身が売主となっている場合にのみ適用される制限です。これらの制限があってはじめて、売主と買主が同等の立場に立つことができるとされています。
1.自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限
(自己の所有に属しない物件を売買契約締結をすることはできない)
自分が持っていない物件を売買してはいけないということであり、確実に手に入るものの売買に関しては例外として認められています。
またクーリングオフとして、事務所以外の場所で契約した場合にはその後一定期間、申し込みの撤回や解除をすることができます。
2.クーリングオフの適用
事務所等(不動産会社の支店・モデルルーム等)以外の場所で物件購入の申し込みや売買契約を締結した場合、買主にクーリング・オフの適用がされる。
クーリング・オフの適用については書面で買主に告げること。
クーリング・オフの適用を買主に告げた日から8日以内なら、買主は無条件(損賠賠償や違約金の支払い等なし)で申し込み・契約解除をすることができる。
3.損害賠償額の予定等の制限
(債務不履行による契約解除の発生に伴う損害賠償額の予定、または違約金を定める場合は、代金額の10分の2を超えてはならない)
損害賠償額の予定金額や手付額にも制限があり、債務不履行によって契約が解除される場合の損害賠償額や手付額は、代金の2割にあたる金額を超えてはいけないことになっています。
手付金には保全措置も必要であり、保全措置がなければ買主が手付金を支払う必要はありません。
4.手付額の制限等
(手付金は代金の10分の2を超えてはならず、相手方が契約の履行に着手するまで買主は支払った手付金の全額放棄によって、売主は手付金の倍額を償還することで契約解除が可能となる)
5.瑕疵担保責任の特約制限
(物件の引渡しから2年以上となる特約を除き、瑕疵担保責任は民法の原則よりも買主に不利となる特約は認められない)
瑕疵担保責任特約の制限については引き渡しから2年以上という特約がない限り、民法で定めている原則よりも買主にとって不利な特約があれば無効になります。
割賦販売契約の解除等に関する制限としては割賦金が支払われず、書面で支払いについて30日以上の期間を定めて催告しても支払われなければ売主は契約を解除するとともに、残っている割賦金も請求することが可能です。
6.手付金等の保全措置
(手付金の受領は保全措置を講じた後でなければならず、売主が保全措置を講じない場合は買主は手付金を支払う必要はない)
7.割賦販売契約の解除等の制限
(割賦販売契約で割賦金の支払いが行われない場合は、30日以上の期間を設けて書面で支払いを催告し、期間内に支払いが行われない場合以外は契約解除や残りの割賦金の請求ができない)
8.所有権留保等の禁止
(所有権留保による売買契約をすることはできず、引渡しまでに登記の移転等を行う必要がある。また、引渡し後に担保目的で譲渡担保することはできない)
所有権留保は禁止されていて、そのままで売買契約を結ぶことはできません。
引き渡しの前には、登記の移転を終えていなければなりません。
そして
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。