「マイホームは人生で一番高い買い物」とよく言われますが、それだけ高価なものなので、一括支払いで購入する人はごく少数で、ほとんどの人が住宅ローンを活用して購入しています。しかし、住宅ローンで借りられるだけ借りてマイホームを購入しても、そのあとの返済が大変になってしまいます。そのため、「どれくらいの価格が目安なのか」が気になるのではないでしょうか。
そこで今回は、マイホームの中でも中古マンションに絞り込んで、購入金額の目安について、貯金額や頭金と合わせて解説します。
マイホームを購入するときに必要なお金にはどんな項目がある?
住宅ローンを利用してマイホームを購入すると言っても、購入にあたって必要なすべての費用を住宅ローンでまかなうわけではありません。マイホームを購入するときなどに、預貯金から支払うものもあります。例えば、物件費用の一部を「頭金」として支払うケースが多いでしょう。また、不動産登記に必要な税金や引越し・家財道具の買い替えなどでもお金がかかってきます。
このように、住宅ローン以外での支払いも一緒に考えなければならないのです。
では、具体的に購入金額の目安などについて見ていきましょう。参考になる資料として、フラット35を提供している住宅金融支援機構が公表している「2018年度 フラット35利用者調査( https://www.jhf.go.jp/files/400350205.pdf )」の内容も引用しながら解説します。
年収別、中古マンション購入金額の目安
ではまず、年収別の中古マンション購入金額の目安を見てみましょう。一般的には、「現在の年収の5倍程度」が目安と言われています。「2018年度 フラット35利用者調査」では、中古マンションの平均所要資金は「年収の5.7倍」となっています。
単純計算ですが、年収の5倍となる金額は、下表のようになります。
年収 | 物件価格の目安 |
---|---|
400万円 | 2,000万円 |
500万円 | 2,500万円 |
600万円 | 3,000万円 |
800万円 | 4,000万円 |
1,000万円 | 5,000万円 |
ただ、「年収がいくらだから、これくらいのマンションを購入すべき」となるわけではありません。この目安を基準に、貯蓄額、頭金、将来の見通しなどを考えて、どれくらいの物件にすべきかを考えましょう。
毎月の返済額がどれくらいになるのかを確認
通常、住宅ローンは、「元利均等返済」という毎月定額で返済するのが一般的です。毎月決まった金額をローン返済に充てることになるため、その負担が重くならないように気をつけなければなりません。
そこで、どれくらいの金額の物件を購入するかを考えるために、住宅ローンの返済シミュレーションをしてみましょう。ここでは、「フラット35」の返済シミュレーションページを参考に、シンプルなパターンで、借入金と毎月の返済額を紹介します。
借入期間 | 金利 | 借入金額 | 毎月の返済額 |
---|---|---|---|
35年 | 1.35% | 2,000万円 | 6万円 |
2,500万円 | 7.5万円 | ||
3,000万円 | 9万円 | ||
4,000万円 | 12万円 |
※参考:借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】
※金利は2022年2月、融資率9割以下でのフラット35の最低金利。ボーナス返済割合はゼロで試算
フラット35を利用しない場合、試算で利用した金利よりも低くなることが多いようですが、返済額の目安として参考にしてください。
現在、賃貸住宅で暮らしている方の場合は、今の賃料が「住宅ローン返済額+固定資産税等」に変わると考えられます。今の賃料と比較しながら、住宅ローンを無理なく返済できるかを考えてみましょう。
返済負担率の目安には注意が必要
マイホームを購入するときの目安として使われる指標に「返済負担率」というものもあります。これは、「毎月の返済額がどれくらい負担になるか」を見ることができるもので、「1年のローン返済額÷年収(年収に占めるローン返済額の割合)」で求められます。
その返済負担率の目安としてよく言われるのが「25%以下にすること」です。しかし、返済負担率が25%以下であったとしても、物件の購入金額や住宅ローンの金額が適切だとは限らないことに注意してください。
例えば、年収500万円の場合、返済負担率25%は「1年のローン返済額=125万円」という水準です。これで、住宅ローンで借りられる金額を試算すると、「固定金利1%で35年ローンだと、3,500万円程度借りても問題ない」という計算になってしまいます。頭金などと合わせると4,000万円の物件でも購入できることになり、「年収の5倍=2,500万円」を大きく上回ってしまいます。
また、返済負担率の計算は「年収」でしているため、税金や社会保険料を差し引いた後の「可処分所得」に対する住宅ローン返済の比率はもっと高くなってしまいます。返済負担率を参考にして物件選びをしたものの、毎月10万円もの返済が生活を圧迫してしまっては意味がありません。返済負担率だけで判断してしまわないように注意しましょう。
なお、「2018年度 フラット35利用者調査」では、中古マンション購入者の平均返済負担率は「19.8%」となっています。
近年、資材価格等が上昇している影響で、平均返済負担率も徐々に上昇していますが、全体平均でも「21.8%」であり、返済負担率25%以上の住宅ローンを組んでいる人はあまり多くありません。
一番考えておきたいのは「収入・家計とのバランス」
マイホームを購入するときに心配な点は、「毎月の返済が家計に重い負担になってしまわないか」でしょう。だからこそ、収支のバランスに注目しなければなりません。
多くの金融機関では、返済負担率で30~35%程度を、住宅ローンの貸付限度額としているようです。はじめに説明した「年収の5倍」という物件価格の目安と、返済負担率30%となる住宅ローンの金額を一緒に見てみましょう。
年収 | 物件価格の目安 | 返済負担率30%での年間返済額 | 住宅ローンの借入額 |
---|---|---|---|
400万円 | 2,000万円 | 120万円 | 3,300万円 |
500万円 | 2,500万円 | 150万円 | 4,100万円 |
600万円 | 3,000万円 | 180万円 | 5,000万円 |
800万円 | 4,000万円 | 240万円 | 6,600万円 |
1,000万円 | 5,000万円 | 300万円 | 8,000万円(※) |
※参考:借入希望金額から返済額を計算:【フラット35】
※金利は2022年2月、融資率9割以下でのフラット35の最低金利。年間返済額を年収の30%として試算
※年収1,000万円のケースでは、計算上の借入額がフラット35の借入上限額を超えるため、上限となる8,000万円とした
こうして見てみると、住宅ローンは年収の7~8倍程度まで借りられる計算になることがわかります。
しかし、繰り返しになりますが、住宅ローンを利用してマイホームを購入するときに重要なのは、無理なく返済できることです。中古マンションを購入した後、毎月のローン返済が無理なく行えるかどうかを考えてみてください。
5年後、10年後に、収入が順調に増えていきそうでしょうか。子どもが生まれ、大きくなるにつれて、食費、学費、通信費などが増えていきますが、それでも無理なく返済が続けられそうでしょうか。さらに、病気・ケガや親の介護など、いざというときの支出のために、貯蓄を増やしていくことができるでしょうか。
こういったことをあわせて考えながら、家計に重い負担にならない住宅ローンの金額、物件価格を判断しましょう。もし、自分だけで考えるのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーなど、第三者の意見を参考にするのもよいかもしれません。
頭金はどれくらい用意すべきか
最後に、頭金についてお話しします。
中古マンションなどを購入する際、購入金額の一部を頭金として支払います。頭金の目安は「物件価格の2~3割」と言われており、仮に3,000万円の物件を購入する場合は、600~900万円の頭金が必要になる計算で、かなりの大金です。
しかし、この目安はあまり現状を表しているとは言えません。近年では、そこまで頭金を用意しなくてもよくなっているのも事実です。
同じ物件を購入する場合、頭金を多くすればするほど、住宅ローンの借入金額を抑えることができます。数十年前は、住宅ローンの金利が今よりもずっと高く、頭金を準備することで、利子を含めた「住宅ローンの総返済金額」をかなり小さくすることができました。また、頭金を多く準備できている方が、銀行の融資が通りやすかったのです。
しかし、現在は超低金利時代で、住宅ローンの金利も非常に低い水準です。頭金が少なめでも、住宅ローンの利用条件が悪くなりにくくなっています。そのため、準備できる頭金が少なくても、利子の負担がそれほど大きくならず、ローン返済の負担もあまり変わらないと言えます。
また、建売住宅や新築マンションと比較して、中古マンションは、少ない頭金で購入している人が多いようです。「2018年度 フラット35利用者調査」によれば、頭金に相当する「手持金」は、購入金額の10.4%にとどまっています。最終的には物件によりますが、中古マンションの平均で言えば、2,000万円の物件で約210万円、3,000万円の物件で約310万円程度の頭金を準備すれば購入できる計算になります。
とはいえ、できるだけ多くの頭金を準備した方が、毎月の返済額を抑えることができ、無理のない返済プランを実現できます。将来のライフプランなどと合わせて、どの程度の頭金を準備するかを考えるようにしましょう。
おわりに:一番重要なのは、住宅ローンを無理なく返済できるかどうか
マイホームを購入する場合、住宅ローンを無理なく返済できるかどうかがとても重要です。平均的な物件価格や頭金の目安を参考に、どれくらいの価格の物件を購入するべきかを考えて、物件探しをするようにしましょう。中古マンションの場合は、比較的少なめの頭金で購入できるメリットもあります。
中古マンションなどを購入するときは、物件価格以外にも税金や諸費用がかかってきます。その金額も決して小さいものではありませんが、不動産会社に支払う仲介手数料は、手数料無料の業者であれば、大きく負担を抑えることも可能です。
ファイナンシャルプランナー横山さんコメント
中古マンションは、建売住宅や新築マンションと比較して、エリアや広さなどの条件が同じであれば、安い価格で購入することができます。また、準備する頭金を抑えやすいこともあり、手が届きやすいマイホームだと言えるでしょう。
ただ、新築でも中古でも、住宅ローンを無理なく返済できるかを意識することは大切です。不安であれば、信用できる専門家などに相談して、住宅ローンの返済シミュレーションをもとにしてライフプランを確認してみることもおすすめします。
この記事を執筆した人
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト、MBA(経営学修士)
横山 研太郎
ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそ、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案することができることを強みとする。保険だけ、投資だけに片寄ることなく、今の生活も将来の生活も可能性に満ちたものにするようアドバイスすることを心がける。