住宅を購入する際、競売物件を検討することも一つの方法として注目されています。
なぜなら、競売物件は「一般市場価格よりも安い」というメリットがあるからです。
かつて、競売物件は転売を目的とした不動産会社やそれに準ずる不動産投資家が購入することが一般的でした。しかし昨今ではインターネットの普及によって競売物件の情報に容易にアクセスできることから、不動産のプロのみならず一般の方からも注目されています。
競売物件は一般市場価格よりも安いという大きなメリットがある一方で、下記のようなデメリットもあります。
競売物件のデメリットとは、
- 引き渡し時において売主が通常負うべき義務が無い
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)が無い
- 住宅ローンが利用しづらい
競売物件は特殊な手続きで購入する方法であるため、物件の性質や手続きについてきちんと理解していないと、購入後に大きなトラブル発生する可能性があります・
本記事では、競売物件について詳しく解説するとともに、検討するうえで必ず理解していただきたいメリットとデメリットを紹介していきます。
競売物件に少しでも興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
競売物件ってどんな物件のこと?
皆さんも一度は耳にしたことがあるであろう「競売物件」。
では、そもそも競売物件とは何のことかご存じでしょうか。
「競売」は字の如く、物件を入札にかけることによって、一番高い価格を提示した人に売却する方法です。そしてこの入札を取り仕切るのは、物件の所有者や不動産会社ではなく「裁判所」が行います。
競売にかけられる物件とは、物件の所有者による自己破産や倒産が発生し、その債権者の申し立てによって裁判所が競売手続きを開始した物件のことを言います。
通常の取引では、不動産の所有者自らの意思で売却活動を開始します。しかし、競売は民事執行法という法律に基づいて、裁判所が所有者に代わって不動産を売却する制度です。
つまり、本来所有者であるはずの債務者の意思に関わらず、法律によって強制的に物件を売却するという点が通常取引と大きく異なる点です。
なお、これらの物件の情報は、一般的な不動産サイトや不動産会社の窓口では紹介されることが無く、物件が所在する裁判所の窓口や「B I T」と呼ばれる最高裁判所が運営する専用サイト、または一部情報誌や新聞で確認することができます。
競売物件は購入しないほうがいい?
ここまでご説明したとおり、競売物件は少し複雑な仕組みをしています。一般の方は購入しないほうがよいのでしょうか。
結論から言えば、一般の方は通常の中古物件を購入した方が良いです。あまり不動産の知識や取引に自信のない方はチャレンジしない方が無難と言えます。
競売物件は手続きが通常の取引に比べて煩雑なうえ、後にデメリットで紹介するような購入時や購入後のトラブルが発生するリスクがあるからです。
また通常の中古取引であれば、仲介会社に手数料を支払って手続きの依頼をすることが一般的ですが、競売物件では基本的に全ての手続きをご自身で行う必要があります。
このような点からも、不動産に不慣れな方が競売物件を扱うことは非常に難易度が高いのです。
しかしながら、リスクや手間があるからこそ、希望にマッチした物件を購入できた際は通常の取引よりも特に金銭的メリットが大きいことも事実です。
その証拠に、競売物件を専門に扱う不動産会社や個人投資家も多数存在しています。
競売物件は一般の方であっても、
- 入札・購入前に物件の性質やリスクをしっかり把握できる知識や経験がある方
- あるいはその様な知識を具体的にアドバイスしてくれる人が近くにいる方
などは、チャレンジする価値は十分にあると言えます。
競売物件を購入するメリット2つ
ここから、競売物件のメリットとデメリットをご紹介します。
まずは2つのメリットを見ていきましょう。
一般の市場価格よりも安く入手できる可能性がある
競売物件は、一般の市場価格の70〜80%の価格で入手できることが通例となっています。
当然、ただ安いというわけでは無く先述した様に物件のリスクがあるからこそ、競売市場として独自の評価がされているのです。
特殊な物件が見つけやすい
もう一つのメリットとして、競売市場には特殊な物件が多いというポイントが挙げられます。
不動産の中には、極端に変形した土地や道路に接していない土地など、土有効利用はおろか、そもそも建物が建築できないなど、利用価値に乏しいものも存在しています。
そうした土地はそのままの状態では価格が付かないため、一般の取引にあっては売却活動を開始する前に仲介会社が所有者の依頼を受けて隣地を買収するなど、市場で価格が付く商品として仕上げていきます。
もちろん、その仲介会社の手間に対しては手数料を支払わなければならず、相応のコストが発生するのです。
一方、競売市場では、変形した土地だろうが接道していない土地だろうが、皆一律に手続きが行われます。
競売物件を専門に扱う不動産会社は、こうした市場価値の低い物件を取得し、自らの手間で商品性を高め、一般市場で売り出すことによって利益を得ています。
利益を求めない一般の方であっても、なるべく安価に狭小住宅を建てたい方や、一般市場では出回らない山林などを希望している方は、競売市場をチェックしてみることはとても有効な手段と言えるのです。
競売物件を購入するデメリット3つ
競売物件を検討する際は、特にデメリットを注意深く認識し対策しておくことが重要です。
ここからは、デメリット3つを詳しく見ていきましょう。
- 物件の内見ができない
- 引き渡し時において売主が通常負うべき義務が無い
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)が無い
- 住宅ローンが利用しづらい
物件の内見ができない
一般的な市場に流通する物件であれば、購入前に実際の物件を見て購入するか否かを決定できることが通常です。しかし、競売物件は入札前に物件内に立ち入ることができません。
そのため、入札参加者は「3点セット」と呼ばれる下記書類の内容から、参加可否や入札価格を決定しなければなりません。
- 物件明細書
- 現況調査報告書
- 評価書
以上の点からも、競売物件は取得後のリスクが高いと言われているのです。
引き渡し時において売主が通常負うべき義務が無い
通常の取引では、買主の完全な所有となるよう物件の引き渡しを行うことが売主の義務となっています。
至極当然のことの様に思えますが、競売物件ではこの引き渡し義務がありません。
そもそも、競売物件は本来の所有者の意思を離れて裁判所が強制的に売却する制度であるため、真性な売主という者が存在していません。
そうなると、通常取引では一般的である隣地との境界確認や、エアコン・ガスレンジなどの付帯設備に関する点検や説明などは基本的に受けることができません。もっと言えば、もし建物に見知らぬ第三者が居住していたとしても、その立ち退き交渉は購入者自らが行わなければならないのです。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)が無い
通常の取引では、引き渡し後において物件に隠れたる瑕疵が発見された場合、一定の間、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)が売主の義務として課されます。しかし、売主が存在しない競売物件ではこの責任が無いため、購入後に不具合があったとしても、なんら補修や損害賠償を請求することはできないのです。
ただし、評価書の内容と現状にあまりの乖離があった場合は、売却許可決定の取り消しを要求できる可能性があります。
住宅ローンが利用しづらい
競売物件では、住宅ローンが利用しづらいという側面があります。
通常の中古物件で場合、本人の与信や物件担保評価が得られれば、住宅ローンを組むことはそれほど難しいことではありません。
しかし競売物件は、手続きの特殊性が強く、さらに物件の担保評価も難しいため金融機関側が住宅ローンとしての貸し出しに難色を示す場合が非常に多いのです。
したがって、競売物件を購入する場合は、住宅ローンではなく銀行の事業用ローンなど、他のローン商品も併せて検討されることが良いでしょう。
おわりに:競売物件を検討するなら入念な事前調査が重要
競売物件は、物件・購入手続きともに通常取引とは異なる点がたくさんあることがご理解いただけたでしょうか。
通常の取引よりも購入時・購入後におけるトラブルの発生するリスクが高い分、一般的な市場価格よりも安く手に入る可能性があるため、上手く購入することができれば金銭的メリットが非常に大きいと言えます。
ただし、競売物件は仲介会社に依頼することなく、ほとんどの手続きをご自身で行う必要があります。
検討される際は、インターネットの情報や専門業者のアドバイスなど、入念な事前調査を行うことが重要です。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。