住宅を購入するときには、手付金が必要です。一般的に「物件価格の5~10%」と言われており、まとまった資金が必要です。
今回は、手付金の仕組みとどうして手付金が必要なのか、そして、手付金が用意できないときの対応方法について解説します。
住宅購入時にかかる手付金とは
住宅を購入するときにかかる費用には、さまざまなものがあります。その中のひとつが「手付金」です。
手付金は、不動産の売買を円滑かつトラブルなく進めるために役立つ仕組みです。買い手・売り手双方が物件を売買する意思を、より信頼性ある形で表明できるものとも言えるほか、解約に備えた「解約手付」という側面も持っています。
不動産を売買するときは、不動産売買契約を結び、しばらくしてから代金の支払いと物件の引き渡しをします。手付金は、売買契約を結ぶときに、買い手が売り手に対して現金で支払います。
手付金は引き渡し時に支払う代金に充当されますので、引き渡しのときには物件価格から手付金額を差し引いた分だけを支払うこととなります。
手付金の金額は、一般的に、「物件価格の5~10%程度」と言われます。物件価格が2,000万円であれば、「100~200万円」。物件価格が3,000万円であれば、「150~300万円」となります。住宅ローンの借り入れができるよりも前に支払わなければならないため、住宅購入には、ある程度まとまった自己資金が必要と言われているのです。
ただ、物件価格が高額な場合は手付金も高額になってしまいます。本来は、「契約後のキャンセルを防ぐ」というのが目的ですので、手付金を大きくしすぎるメリットはあまり大きくありません。そのため、高額物件などでは、手付金が物件価格の5%よりも低く設定されていることもあります。
▼頭金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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手付金を支払う理由
では、どうして物件の引き渡しよりも早い段階で、手付金を支払わなければならないのでしょうか。それは、不動産取引の一般的な流れによる理由があります。
不動産取引は、スーパーやコンビニで買い物をするように、契約時にお金とカギを交換して取引成立とするわけにはいきません。家を明け渡す準備や不動産登記の手続きなどの準備が必要です。そのため、どうしても売買契約から引き渡しまでタイムラグができてしまうのです。
しかし、契約から引き渡しまでの間に、買い手にもっといい物件が見つかったり、売り手にもっと高く買ってくれる相手が見つかったりした場合には、どうなってしまうでしょう。もしも自由に契約解除ができてしまうと、お互いに安心して不動産の取引をすることができません。そこで役に立つのが、「解約した場合のペナルティー」となる手付金なのです。
手付金が解約した場合のペナルティーになる仕組み
手付金は、買い手が売り手に支払うお金ですが、どうしてこれが「解約した場合のペナルティー」になるのでしょうか。
買い手側が契約後に解約したい場合は、支払った手付金を放棄することになります。つまり、引き渡し時に物件価格に充当される予定だった手付金が、「キャンセル料」に変わるのです。
一方、売り手側が解約したい場合は、「受け取っている手付金の2倍の金額を支払う」とされています。受け取った手付金を返還するだけでなく、倍額を支払うことで、買い手側のキャンセル料と同じキャンセル用になるような仕組みとなっているのです。これを「倍額償還」や「倍返し」と呼ぶこともあります。
手付金を解約できる期間は定められています
なお、手付金を放棄・倍額償還することで解約できる期間(手付解除期日)も定められています。その期間は、契約締結から引き渡しまでの期間によって異なりますが、「引き渡しまで」と定められているとは限りません。
手付解除期日を過ぎて解除する場合は、「違約金」が発生することとなり、より大きなペナルティーがかかることがあります。
また、手付解除期日が「相手方が履行に着手するまで」と、明確に日数が定められていない場合もあります。買い手側の場合は、「売り手が不動産登記変更手続きに取りかかったとき」などが当てはまります。さらに、注文住宅を購入する場合は、「建設会社が工事を始めたとき」などが履行の着手にあたる場合もありますので、注意してください。
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手付金がかからない物件はあるのか?
手付金はかなりの金額になるので、できるだけ手付金が安い物件を見つけたいと思うかもしれません。
手付金は、その仕組みについて民法で定められてはいますが、不動産の取引で必ずしなければならないものとは定められていません。そのため、手付金がとても安い物件や、手付金がかからない物件も中にはあります。
しかし、手付金は不動産取引を円滑にトラブルなく進めるためのものであるため、手付金がかからない物件はほとんどないのが現実です。
手付金をいくらとするルールはないため、売主と交渉して、手付金を引き下げてもらう交渉をすることも可能ですが、買いたいと思っている住宅で手付金交渉がうまくいくケースはそうそうないと考えておくべきです。
それは、あなた自身が「手付金を減額して欲しい」と考えるのが自由であるのと同様に、売り手側も手付金を減額するかどうかは自由だからです。
人気がない物件であったり、売り手が早く売ってしまいたい事情があったりするならば、手付金を減額してでも契約しようと考えてくれるでしょう。しかし、人気のエリアなどの場合は、少し待てば他の買い手が現れるでしょうから、わざわざ手付金が少ない「キャンセルされやすいかもしれない相手」と契約する必要はありません。
そのため、多くの人が「この家に住みたい」「この地域に住みたい」と思う住宅ほど、手付金を減額して購入するのは難しいのです。
「法人が売主の物件には、手付金が不要な物件もある」といった話もありますが、数が少ないため、「住みたいと思える家」が見つかるかどうかはわかりません。
フルローンなら手付金が用意できなくても住宅購入できるのか
近年、自己資金なしでマイホームが買える「フルローン」が増えています。これは、住宅ローンの借入金額が物件価格と同額となっているものです。
「フルローンなら、物件価格に充当される手付金も用意できる」と考えてしまいがちですが、それは間違いです。フルローンの場合でも、融資が実行されるのは「物件の引き渡し時」とされるのが一般的です。
つまり、一旦は自己資金で手付金を支払っておき、「引き渡しと融資が実行された後には、手付金の分だけ銀行口座に残高が残る」となり、やはり最初にまとまったお金が必要なのには変わりありません。
なお、フルローンは、物件価格の一部を自己資金で購入する場合の住宅ローンよりも審査が厳しくなります。審査には、収入や勤務先、保有している資産等が影響します。フルローンでは審査が通過できない場合もあるので、物件を探す前に、金融機関に相談しておくことをおすすめします。
▼フルローンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
不動産購入時の「フルローン」とは?使うメリット・デメリットを徹底解説 | ブログ
手付金が用意できない場合はどうすればいいのか
では、住宅を購入したいけれど手付金が用意できない場合はどうすればいいのでしょうか。その方法は、大きく3つ挙げられます。
①手付金が安い・かからない物件を探す
前述の通り、数は多くないですが、手付金が安い物件やかからない物件も中にはあります。自分が住みたいと思える住宅が見つかる可能性は低いですが、フルローンで住宅ローンが借りられそうなら、考えてみるのもよいでしょう。
②直系尊属からの贈与を受ける
もし、父母・祖父母から住宅資金の援助が受けられそうなら、贈与税が非課税となる特例があります。「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度(※1)」というものです。
非課税となる限度額は、省エネ等住宅で1,500万円、それ以外で1,000万円です(※2)。
(※1)参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁
(※2)住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%で、契約締結日が2020年4月から2021年12月末までの場合。それ以降も制度が継続されるかは未確定です。
③親族からお金を借りる
通常の手付金がかかる物件を購入したいのであれば、どうにかしてお金を借りるしかありません。契約締結前に借りて、フルローンで住宅を購入し、引き渡し完了後に返済するようにします。
ただし、お金を借りるのであれば、相手は「親族」が望ましいでしょう。その際は、贈与と判断されて課税されないようにするために、また、お互いに約束を明確にするために、借用書を作成して借りるようにしましょう。
なお、消費者金融などからお金を借りると、住宅ローンの本示唆に悪影響があるため、おすすめできません。本審査は、住宅の売買締結後に行われるため、手付金としてお金を借りた状態を元にして審査が行われます。そのため、事前審査では承認されていたにも関わらず、本審査が通過できずにマイホームを購入できなくなる恐れがあるのです。
また、消費者金融でお金を借りる場合は、総量規制の対象で「年収の3分の1まで」しか借りることができず、手付金の全額を準備できない可能性もあるでしょう。
▼消費者金融が及ぼす影響についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
借金があっても住宅ローンを組む方法はある?消費者金融が及ぼす影響についても解説 | ブログ
このように、親族からの借り入れなどで手付金を用意して住宅を購入することができますが、「購入する住宅の金額を抑えたり、一旦住宅購入をあきらめたりする」という決断も重要です。
現在、充分に貯蓄できていないということは、マイホームを購入することができても、その後に収入が落ち込んでしまったりするようなことがあれば、たちまち生活が立ち行かなくなってしまう可能性もあるのです。まずは、生活を見直すなどして、余裕をもって生活できるようにすることも必要なのではないでしょうか。
まとめ:手付金が用意できないときは検討し直すことも大切
手付金は、不動産の売買契約時に買い手が売り手に支払うお金です。物件の引き渡し時に物件価格に充当されますが、住宅ローンの融資実行は引き渡し時になるのが一般的であるため、手付金は自己資金で用意できるようにしておきましょう。
もし用意できなさそうなのであれば、手付金が安い・かからない物件を探すこともできますが、数が少ないので、理想の家を見つけられるかどうかはわかりません。また、親からの援助や親族からの借り入れで、手付金を用意することも可能です。
ただ、手付金が用意できないのであれば、その後の生活のことも考え、購入する家を見直したり、購入を先延ばしにしたりするなども考えた方がいいかもしれません。
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この記事を執筆した人
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト、MBA(経営学修士)
横山 研太郎
ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそ、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案することができることを強みとする。保険だけ、投資だけに片寄ることなく、今の生活も将来の生活も可能性に満ちたものにするようアドバイスすることを心がける。