不動産の取引では様々な手続きを行います。
「決済」はその中でも最終局面に位置しており、売主に対して売買代金の支払いを行う非常に重要な手続きです。
決済までには、住宅ローンの手続きや登記の手配など、短い期間で様々な準備が必要となります。基本的には仲介会社が中心となって手配してくれますが、行政書類などは事前にご自身で用意しなければなりません。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 決済は買主が売主に売買代金を支払うことを指す
- 決済は平日の午前中に行うことが一般的
- 住宅ローンの利用有無や種類で決済場所が異なる
- 所有権移転登記に必要な書類も準備が必要
書類に不備があった場合、予定日に決済が行えず延期しなければならないケースも少なくありません。
この様な状況を回避するためにも、「どんな時に、どんな準備や書類が必要なのか」を事前に把握しておくことが重要です。
今回は、不動産決済について、決済の意味や流れを徹底解説していきます。
不動産決済とは?
不動産決済とは「不動産の買主が売主に売買代金を支払うこと」を指します。
売主はこの売買代金の支払いと引き換えに所有する不動産を買主に引き渡し、同日に所有権移転の登記を行います。
なお、決済は売買契約から1~2ヶ月後に行うことが一般的で、この期間中に買主は売買代金の準備や登記の手配、一方の売主は引っ越しなどの引き渡し準備を行います。
ただし、買主が住宅ローンを組まず現金で購入する場合、かつ不動産がすぐに引き渡しできる状態であれば、売買契約と決済を同時に行うことも可能です。このことを不動産業界では「一括決済」と呼びます。
不動産決済に必要な書類等・準備すること
決済までには主に以下2つの準備が必要です。
- 代金支払いの準備
- 所有権移転登記の準備
売買代金支払いの準備
売買代金は、決済当日に銀行振り込みにより売主へ支払うことが通常です。
売主が希望する場合は現金での支払いも可能ではありますが、セキュリティ面などを考慮し、実務上では預金小切手などで対応する場合が多いです。
住宅ローンを利用する場合、決済当日までに金融機関の融資承認を取得し、金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)を締結します。この住宅ローン契約の内容を基に、予定された決済日に金融機関がローンを実行し、買主の銀行口座に売買代金として支払うお金が振り込まれるという仕組みです。
住宅ローンの本審査および金銭消費貸借契約には以下の様な書類が必要です。
- 運転免許証などの本人確認書類
- 健康保険証
- 住民票
- 源泉徴収票
- 住民税決定通知書
- 課税証明書
- 納税証明書
- 確定申告書(会社員以外の方)
- 不動産売買契約書
- 重要事項説明書
- その他購入物件に関わる書類
提出書類は金融機関によって異なるため、不動産の売買契約が完了次第速やかに確認することが重要です。なお、仲介会社の提携ローンなどを利用すれば、購入物件に関わる書類などは仲介会社の担当者が代わって手配してくれる場合もあるので、準備に不安な方は検討されることをおすすめします。
決済日の期限は、不動産売買契約書に記載することが一般的です。
買主はこの決済日までに住宅ローンの手続きを完了させる必要がありますが、万一予定していた金融機関で住宅ローンの融資承認が下りない場合、他に融資してくれる金融機関を探さなければいけません。
住宅ローンを利用する不動産取引では、どうしても融資承認が下りない場合に売買契約を解除する「融資特約」をつけることが通常です。
この内容については売買契約時に仲介会社から説明を受けるのですが、あまり耳慣れない言葉であるため売主・買主ともに理解せずに進めてしまい、後にトラブルになるケースが少なくありません。
万が一に備え、住宅ローンを利用する場合は、この融資特約についても十分理解する様に努めましょう。
登記の準備
決済日には所有権移転登記、および住宅ローンを利用する場合は抵当権設定登記を行います。
所有権移転登記とは、不動産を売買したときに所有権が売主から買主に移ったことを法務局に記録することを指します。
また、抵当権設定登記は、原則的に住宅ローンの組む場合は購入物件を担保として差し入れる必要があり、その担保の証拠として金融機関を抵当権者とする登記を行います。
いずれの登記も、通常は司法書士に委託します。
この登記には特殊な場合がない限り、以下2点の書類を提出します。
- 身分証明書
- 登記委任状
登記委任状は司法書士が作成し、買主が決済当日に署名・押印して提出します。
また、登記に必要な「登録免許税」は、事前に司法書士が評価証明書記載の評価額から計算します。
買主は司法書士報酬と併せて登録免許税を決済当日に支払い、預かった司法書士が買主に代わって納税することが一般的です。
不動産決済~引き渡しの流れ
決済は売買代金の支払いがあるため、金融機関が営業している時間帯に行う必要があります。
そのため、通常は平日の午前中に行います。
なお、決済〜引き渡しまでは以下の流れで進みます。
- 住宅ローン借入の金融機関に集合
- 司法書士による登記必要書類の確認
- 買主による売買代金の支払い
- 売主による着金確認
- 売主から買主へ、物件書類や鍵の引き渡し
- 仲介手数料の支払い
- 解散
住宅ローンを利用する場合、通常は金融機関の打ち合わせスペースで行います。場所の確保は事前に仲介会社が行うことが一般的です。
また、決済の所要時間は概ね1時間程度です。ただし、月初や月末の場合は金融機関が忙しく、送金〜着金までに時間を要する場合があるため、時間には余裕を見ておきましょう。
なお、決済後2週間程度で司法書士から「登記識別情報通知」が送付されます。これはいわゆる「権利証」のことで、ご自身が不動産の所有者として登記されていることを記した証書です。
権利証は将来売却する際に必要となる書類であるため、大切に保管しておきましょう。
現金取引やフラット35の場合は流れが変わるので注意
現金取引やフラット35を利用する場合は、銀行の打ち合わせスペースが使用できないため、仲介会社や司法書士の事務所などに集合して決済を行います。
一旦関係者は指定の場所に集合して必要書類が整っていることを確認し、その後買主が金融機関の窓口に移って送金手続きを行います。そのため、実店舗を持つ金融機関の住宅ローンを利用する場合と比べ、移動の分だけ時間を要します。
また、実店舗を持たないネット銀行で住宅ローンを利用する場合も、同様に仲介会社や司法書士の事務所で決済を行います。
ただし、ネット銀行の場合は、司法書士によって登記必要書類が整っていることを確認次第、ネット銀行に連絡を入れることで、あらかじめ指定した振込先に送金される仕組であるため、準備に不備がなければスムーズに決済を完了させることが可能です。
▼ネット銀行で住宅ローンを検討している方は、こちらの記事もご覧ください。
ネット銀行でも住宅ローンを組むことはできる!ただしデメリットもあります
おわりに:必要書類は早めの確認が重要
不動産決済は、取引の最終局面であり非常に重要な手続きです。
決済は売買契約から1~2ヶ月後に行うことが一般的で、この期間中に買主は売買代金の準備や登記の手配、一方の売主は引っ越しなどの引き渡し準備を行います。
▼中古住宅購入の流れについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
中古住宅を購入するときの主な手続きと流れを解説
住宅ローンを利用する場合は、この短い期間に融資の本審査とローン契約を締結しておく必要があります。
本審査やローン契約に必要な書類については基本的にご自身で準備する必要があり、住民税決定通知書や課税証明書など、普段ではあまり馴染みのない書類もあるため注意が必要です。
さらに、金融機関によっても提出を求められる書類の種類や数は異なるため、なるべくスムーズに決済を迎えるためにも、売買契約締結後速やかに必要書類を確認し把握しておきましょう。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。