不動産における消費税は、他の商品やサービスと同様に10%が課税されます。
不動産は購入代金や諸費用を含めてそれぞれが高額であるため消費税のウェイトがとても大きく「何に・どのくらい消費税がかかるのか」をしっかり理解しておくことが重要です。
ただし、そもそも不動産の売買代金については「消費税がかかる場合」と「消費税がかからない場合」があります。
この消費税の有無は「売主が課税事業者かどうか」ということがポイントで、個人間の売買であれば原則的に消費税はかかりません。
本記事の解説のポイントは以下のとおりです。
- 個人間の売買では消費税はかからない
- 売主が課税事業者である場合に消費税がかかる
- どんな場合でも土地には消費税がかからない
- 諸費用には消費税がかかる
- 消費税の有無によって住宅ローン控除制度の適用が異なる
不動産売買では消費税が注目されることはあまり多くありません。
しかし、消費税の有無は単に代金の多い少ないに留まらず、住宅ローン控除など他のテーマにも影響する内容でもあるため十分に理解しておく必要があります。
個人から不動産購入すれば消費税はかからない?
個人から不動産を購入した場合は、原則的に消費税はかかりません。
不動産における消費税は、売主が課税事業者であった場合、建物に対して課税される仕組みとなっています。
課税事業者とは、課税売上高1,000万円以上の法人やフリーランスのことを指します。
そのため、売主名義が法人である場合はほとんどが課税対象の不動産取引となります。
また、非常に稀なケースではありますが、個人名義であっても売主がフリーランスであり、かつ個人事業者としての売上に計上する場合は、課税対象となるため注意が必要です。
個人間で不動産を売却するときの消費税はどうなる?
不動産を売却するときも、売主が個人であれば消費税がかかることはありません。
ただし、売却益が出た場合は「不動産譲渡所得税」が課税されます。
売却益は、売却代金から購入代金と購入・売却にかかった諸費用を差し引いた金額です。
マイホームであれば3,000万円の控除制度があるため、ほとんど場合で課税される心配はありませんが、それを遥かに超える売却益が出た場合やマイホーム以外の不動産売却においては課税の可能性があるため注意が必要です。
土地だけを個人から購入する場合の消費税はどうなる?
土地だけを個人から購入する場合についても、消費税はかかりません。
さらに、売主が課税事業者である場合も土地の売買には消費税がかかりません。
株式や為替の売買と同様に「土地の売買は資本移転であって消費ではない」という考え方に基づき、非課税となっています。
経年とともに劣化する建物とは異なり、「土地はそこに在り続けるものであり消費されるべきものではない」という概念があるからです。
ただし、土地の上に建物を建築する場合は、その建築費に対して消費税がかかります。
建築条件付きの土地を購入する場合や、土地購入後に注文住宅を建築する場合は、建物代を考慮して資金計画をする必要があります。
売主が課税事業者だったら?
先述のとおり、不動産の売主が課税事業者である場合、建物代金について消費税がかかります。
たとえば土地価格が2,000万円、建物価格が2,000万円である場合、取引にかかる消費税は200万円となり、売買代金の総額は4,200万円です。
建物価格の決め方
不動産価格に占める建物価格は売主が独自に設定しています。
当然、消費税をなるべく納税したくないからといって、著しく建物価格を低くすることは法律上認められません。そのため以下のような根拠を使って価格を設定しています。
- 土地・建物の時価から計算
- 固定資産税評価額の比率から按分して計算
- 不動産鑑定評価額
土地の時価については公示地価や基準地価、路線価と呼ばれる「公的指標」を基にした計算や、単純に周辺の流通価格から想定土地代を計算する方法があります。
そして建物価格については、新築時の建物原価から残りの耐用年数分を価格根拠とする場合が多いです。この耐用年数については構造によって異なっており、国税庁によって基本的な考え方が示されています。
また「固定資産税評価額」とは固定資産税の基準となる価格のことを言います。
固定資産税評価額は、市町村が委託した不動産鑑定士が固定資産評価員として設定し、市町村が最終的に決定します。
そして「不動産鑑定評価額」は、この不動産鑑定士による評価額のことを言います。
売主自らが不動産価格設定のプロである不動産鑑定士に依頼し、さまざまな観点から土地・建物の価格を計算し「不動産鑑定評価書」にとりまとめます。
不動産鑑定士は国家資格であり「不動産鑑定士の評価=公正な評価」として取り扱われるため、不動産鑑定評価額は十分な設定根拠となるのです。
固定資産税の清算金も課税対象となる
不動産売買を行う際は、売主との間で固定資産税の清算を行うことが通常です。
固定資産税は1月1日時点の所有者が1年間分を納税します。そのため、不動産の引き渡し日から12月31日までの分については、日割り計算して不動産代金と一緒に売主へ支払います。
売買代金と同様に、売主が個人である場合は消費税がかかりませんが、売主が課税事業者である場合は、この固定資産税の清算金についても消費税の課税対象です。
個人間での不動産売買の注意点
個人間での不動産売買では下記ポイントに注意しましょう。
- 諸費用には消費税がかかるものがある
- 住宅ローン制度の適用金額や期間が異なる
諸費用には消費税がかかるものがある
仲介手数料や司法書士への報酬、ローン事務手数料など、諸費用の中で課税事業者へ支払うものについては、売主が個人であるか否かに関わらず消費税がかかります。
住宅ローン制度の適用金額や期間が異なる
住宅ローンを利用して購入した場合、築年数や床面積などの一定の要件を満たすと「住宅ローン控除制度」を利用することができます。
住宅ローン控除は、年末のローン残高×1%分を所得税額から控除する仕組みです。
現行法における住宅ローン控除制度の控除期間は最大で13年、控除対象となる残高の上限額は4,000万円と設定されています。
しかし、売主が個人で消費税がかからない場合、控除期間は最大で10年間、残高の上限額は2,000万円と設定されているため、控除の側面でみると消費税がかかる場合よりも劣後することとなります。
▼住宅ローン控除の仕組みや申請の流れ・必要書類の解説はこちらの記事でご覧になれます。
住宅ローン控除とは?申請の流れや必要書類を詳しく解説
▼住宅ローン減税の改正の詳細ついてはこちらの記事でご覧になれます。
住宅ローン減税が改悪されるのはいつ? 改正内容や問題点を解説
おわりに:個人間であれば基本的に消費税の心配はない
不動産も他の商品やサービスと同様に10%の消費税が課税されます。
しかし、不動産の売買代金については「消費税がかかる場合」と「消費税がかからない場合」があり、売主が個人である場合は、基本的に消費税はかかりません。
一方、売主が課税事業者である場合は、建物代金について消費税がかかります。この建物価格については売主が税法上認められる範囲内で独自に設定しています。
なお、土地については売主が個人・課税事業者にかかわらず「土地の売買は資本移転であって消費ではない」という考え方に基づき、いずれも非課税となっています。
消費税がかからない場合は一見お得のようにも思えますが、住宅ローン控除を利用される方は、消費税がかかる物件を購入するよりも控除期間や控除対象の上限額が少なくなるため、このポイントについても十分理解が必要です。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。