不動産購入を決めたら、まずは頭金を用意しなければなりません。
頭金とは、購入価格のうち住宅ローンを利用せずに支払う現金のことを言います。そしてこの頭金の金額は、住宅ローンの利用可否や購入後の返済計画などに大きな影響をあたえます。
購入に関わる重要な要素であるにも関わらず、物件探しの段階で頭金について意識する方はあまり多くありません。実際に、いざ購入するタイミングで初めて頭金の問題に直面する、という方も少なくないのです。そのような状況にならないためにも、事前の対策が重要です。
頭金の対策を練るうえで頭に入れておきたいポイントとは、
- 頭金の金額は物件価格の10~20%が一般的
- 頭金が無くても住宅ローンを組むことは可能
- 頭金の金額によって借入金利が変わる可能性がある
- 頭金の入れ過ぎはリスクになる
など、大きく4点あります。
せっかく購入を決心したのに、金銭的な理由で諦めることは絶対に避けたいところです。
今回は「購入を決めたらまずは確保していただきたい頭金」について、詳しく解説していきます。
何よりも先に住宅ローンの頭金を確保する理由
頭金の金額は、物件価格の10~20%が一般的と言われています。
しかし、そもそもなぜ頭金が必要なのでしょうか。
住宅ローンを利用して購入する場合、売主との売買契約を締結する前には住宅ローンの事前審査を通すことが慣例となっています。
事前審査は簡略的な審査であるため稀に本審査で結果が覆される場合もありますが、買主の金銭的な信用度を契約前に確認することができるため、不動産取引における一般的な手続きとなっています。
そして、この事前審査で重要な基準となるのが買主の自己資金、つまり頭金の有無とその金額です。
住宅ローンの貸主である金融機関には回収リスクが伴います。当然、金融機関としてはなるべく返済能力がある人に貸したいと考えるため、事前審査の段階で頭金が用意できるのか、できるとしたらどの程度の金額なのか、この点を一つの指標として借入者の信用度を測っています。
この審査の段階で頭金が無いあるいは少ない金額を申告した場合、希望していた融資金額が減額されてしまうか、そもそも融資承認が下りない可能性があるのです。
そのため、時世や金融機関によって考え方は異なるものの、安全に事前審査を通過させるためには「物件価格の20%程度の頭金が必要」と仲介会社はアドバイスするようにしているのです。これが物件価格の10~20%が一般的と言われる理由です。
せっかく購入を決心したにも関わらず、住宅ローンの問題によって購入できないことは残念でなりません。
また、人気物件であれば2番手・3番手の購入検討者が待っていることも珍しくはありません。頭金の準備に時間がかかっている間に、他から良い条件で購入申込書が入ってしまえば物件自体が無くなってしまう可能性もあります。だからこそ、頭金は何よりも先に確保することが得策なのです。
もし確保できなかったら不動産購入はできないの?
頭金は物件価格の10~20%が一般的な金額とお伝えしました。
しかし、頭金が無い場合は購入できないかと言えば、必ずしもそうではありません。
むしろ、最近では頭金をほとんど入れず、諸費用を含めて住宅ローンのみで購入するいわゆる「フルローン」を組む方も増えています。
近年は、アベノミクス効果により史上空前の低金利時代と言われています。そのような環境下において住宅ローンを組む場合は、頭金を入れて融資金額を下げるより、むしろなるべく多くの融資を受ける方が金銭的なメリットが大きい場合があります。
さらに、現在ではネット銀行の台頭を受けて金融機関側の融資競争も激化しており、一昔前と比べて住宅ローン審査が通過しやすくなっているとも言われています。これにともなって、頭金の求められる金額も下がっている、という現象が起きるのです。
しかしながら、フルローンを組むことができるのは、年収や勤続年数などの条件が良く、金融機関にとって融資リスクが低いと認められた一部の方に限られるため、あまり一般的ではありません。
また、フルローンが認められたとしても、融資実行時の適用金利が上げられてしまうなど、他の条件が付される可能性も高いため、トータルバランスで考えれば、やはり頭金は準備することが無難と言えます。
住宅ローンを組むときに考えておきたいこと2つ
頭金は住宅ローン審査通過のために必要である一方で、そもそも頭金の金額がご自身にとって適正であるかどうかも重要です。
そこで、住宅ローンを組むときに考えておきたいことは主に2つあります。
- 手元に現金はいくら必要か
- 売却するとしたらいつ頃か
この2つを基に、ご自身にとってバランスの良い頭金の金額を設定することが重要です。
手元に現金はいくら必要か
住宅購入にかかる頭金の金額は、購入時点のみならず購入後の生活を考慮して決定する必要があります。
借入金額をなるべく少なくするために頭金を入れたとしても、手元に現金が無くなってしまい、購入後の生活が成り立たなくなれば本末転倒です。
特に子供のいる家庭では、将来的に教育資金として大きなお金が必要となります。お子さんの年齢などを考慮して、いつ、どのくらいのお金が必要か、住宅ローンを組む前に把握しておきましょう。
なお、ご自身で試算することが難しい場合は、住宅ローンアドバイザーやライフプランナーに相談することもおすすめです。ライフプランを作成することで、いつ、どのくらいお金が必要か把握できることに加え、ご自身に適正な購入予算や頭金の金額を確認することができます。
売却するとしたらいつ頃か
売却のタイミングも重要なポイントです。
売却することになったとき、住宅ローンによる抵当権がついたままでは物件を引き渡すことができません。つまり、売却時点で住宅ローンを完済する必要があります。
特に新築マンションは、入居した途端に一気に価格が下がる傾向があります。頭金を入れ過ぎたために手元に現金がなく、売却金額だけでは住宅ローンを完済できないという可能性があるのです。
例えば転勤などの理由で購入後すぐに売却する可能性がある方は、この売却の可能性と時期に十分注意するようにしましょう。
おわりに:住宅ローンは頭金を意識しよう
住宅を検討される方で頭金を意識する方はあまり多くありません。しかし、頭金の有無や金額は、そもそも物件を購入できるか否かに影響するため非常に重要なポイントです。
また、頭金を多く入れれば良いというわけでもありません。
ご自身のライフプランを考慮して、手元から現金がなくなることで生活苦に陥ることの無いよう、不動産仲介会社や住宅ローンアドバイザー、ライフプランナーに相談するなどして、慎重に決めることをおすすめします。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。