物件探しをしていると目にする「未公開物件」と謳われた広告。
未公開や非公開と聞けば、無条件に「お得な情報だ」と感じられる方もいるかもしれません。しかし、その情報がそもそも本当の意味での未公開なのか、またご自身にとって本当にお得な情報なのか、慎重な判断が必要です。
一般的に、「未公開物件」とは下記のような物件を指します。
- プライバシーの関係で全面的な公開を制限している物件
- 一部の仲介会社が広告を独占している物件
- 一社に販売委託されている物件
- おとり物件
- 広告展開前の物件
未公開と謳って広告展開されている物件のほとんどは、顧客満足を高めようというものではなく、売主と仲介会社の取り決めによるものや、集客のために行われています。
そのため、価格が相場よりも割高であったり、稀にそもそも販売物件でないケースも存在するのです。
この様なリスクのある物件を回避するために、また「本当の意味での未公開物件」の情報を入手するためにも、未公開物件の性質を理解しておくことが重要です。
未公開物件(非公開物件)の定義
そもそも「未公開物件」(非公開)には、正式な定義がありません。したがって、ネットやチラシなどの広告で目にする未公開物件は、販売会社や仲介会社が自らの定義で未公開と記載しています。
ではどの様な場合、広告に「未公開」と掲載されるのでしょうか。主に下記3つのケースが想定されます。
- 一部の仲介会社が広告を独占している物件
- 一社に販売委託されている物件
- おとり物件
一部の仲介会社が広告の権利を独占している物件
中古物件を売却する際は、複数の仲介会社に依頼する場合と、一社だけに依頼する場合があります。
複数の仲介会社に依頼した場合は、同じ価格と内容、条件で広告をそれぞれ展開していきますが、一社だけに依頼した場合は、この仲介会社が単独で広告を展開します。
一社単独で広告できるということは、売買が成立すれば売主から仲介手数料を得ることは確定しています。しかし、買主側については、他の仲介会社から紹介されてしまった場合、買主からの仲介手数料を得ることができません。不動産業界ではそれぞれに仲介会社が介在する取引を「片手取引」、単独で仲介する取引を「両手取引」と言います。
仲介会社としては、当然手数料収入が多い「両手取引」の実現を図ります。そのため、一社単独で広告を展開する場合、その広告を見た購入検討者の興味を引くために「未公開」という記載をするのです。
一社に販売委託されている物件
新築物件であっても、上述した中古物件と同様のケースが考えられます。
新築物件の売主はほとんどが不動産会社ですが、販売方法として「売主である不動産会社が自ら販売する場合」と「販売や仲介を専門とする他の不動産会社へ販売委託する場合」があります。
この販売業務についても、複数の不動産会社が委託を受けている場合と、一社だけが委託を受けている場合があるのです。
ただし仲介業務と異なるのは、一社だけが販売委託を受けている場合においては、他の不動産会社は基本的に買主を紹介することができません。
したがって新築物件の「未公開」については、中古物件よりももう少し「本当の意味での未公開」に近いとも言えます。
おとり広告
最も注意しなければいけないのが「おとり広告」です。
おとり広告は「わざと販売されていない物件を広告展開し、問い合わせてきたお客に対して他の物件を紹介し成約させる」という手口に使われます。
おとり広告には、未公開の記載が多いことが特徴です。いざ問い合わせがあっても、一社単独の情報で、かつ他の購入検討者がいるため紹介できないと言えば、問い合わせ客の疑義を回避することができるからです。
未公開物件(非公開物件)はお客様の優越感のためにある?
未公開広告がなぜ展開されるのかと言えば、やはり「未公開」や「非公開」というメッセージが顧客の優越感を刺激することが理由です。
考えてみれば、ネット広告やチラシ広告が世に展開されている時点で、未公開というには矛盾が生じています。しかし、人はこのメッセージを聞くと「お得だ」とか「掘り出し物だ」と無意識に錯覚してしまうため、今もなお未公開広告は展開され続けているのです。
本当の意味での未公開物件とは?
では、未公開物件が存在しないかと言えば、そうではありません。
下記2つのケースは、本当の意味での未公開物件と言えます。
- プライバシーの関係などで広告展開されていない物件
- 広告展開される前の物件
プライバシーの関係などで広告展開されていない物件
売主と仲介会社の取り決めにより、広告展開されない物件が存在します。
この場合、物件はネットやチラシに掲載されず、依頼された仲介会社の既存顧客に対して個別に紹介されるます。
広告展開される前の物件
仲介依頼された中古物件は、原則的に「レインズ」と呼ばれる物件情報サイトへの登録が義務付けられています。そして、この登録は依頼を受けた仲介会社が行いますが、売主から売却依頼を受けてから登録するまでには、媒介契約の内容によって異なるものの、最大で7日以内に行わなければなりません。
逆に言えば、レインズに登録するまでの間は、依頼された仲介会社のみが知っている売却情報と言えます。先述した様に、仲介会社は両手取引を図るため、この登録までの短い期間中に購入者を探そうと努力するのです。
未公開物件(非公開物件)を紹介してもらうメリット
未公開物件のメリットは主に下記2つが挙げられます。
- 購入検討者の競合が少ない
- 相場通りで購入できる可能性がある
広告展開されていないということは、それだけ購入検討者の数も限られるため、競合が少ない状況と言えます。また、広く広告展開しない代わりに、あまり売却希望価格を高くせず、相場通りの価格設定とすることで早期の成約を図る物件も存在します。
未公開物件(非公開物件)の注意点
未公開物件を検討する際は、下記3つのポイントを意識しましょう。
- 価格が安いわけではない
- おとり広告である可能性がある
- 営業がしつこい可能性がある
一概には言えませんが、未公開広告を展開する不動産会社や仲介会社の思惑は「集客」であることに注意しなければなりません。
本当の意味の未公開物件を紹介してもらうには?
本当の意味の未公開物件を紹介してもらうためには、
- 不動産会社の顧客会員になる
- 不動産会社の窓口で相談する
まずは、これら2つを行いましょう。
本当の意味での未公開であることに加えて、希望条件に見合う物件がタイミング良く現れることは多くありません。まずは、希望条件をしっかり伝え、不動産会社や仲介会社が入手した情報をタイムリーに提供してもらえるように関係を作っておくことが重要です。
こちらの記事では不動産会社の選び方や比較方法を詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
「中古マンションの物件探しを成功させるために知っておきたい不動産会社の選び方や比較方法 」
おわりに:良い条件の未公開物件を探すなら信頼できる不動産会社に相談するのが近道
未公開物件は、そもそも本当の意味での未公開なのか、またご自身にとって本当にお得な情報なのか、慎重な判断が必要です。
未公開と謳われた広告は、単に集客を図るためのメッセージであったり、最悪の場合「おとり広告」である可能性もあります。
しかし一方で、売主の事情によって未公開である場合や、手続きの関係で本当に未公開とされている物件も存在しています。
なるべく競合が少なく、良い条件の未公開物件の情報を得るためには、広告だけを頼りにするのではなく、不動産会社の顧客会員になることや窓口へ直接相談しに行くなど、積極的に情報を取りに行くことが重要です。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。