不動産は一つとして同じ商品が存在せず、それぞれに個別の価格が設定されています。価格設定は物件の立地条件やスペックのみならず、売主の売却理由や経済状況など背景にある事情が影響されていることも多いため、必ずしも相場価格で売り出されているとは限りません。
かねてより、不動産は「市場価格よりも高値チャレンジで売り出し、反応がなければ徐々に落としていく」という売却手法が一般的です。
そのため、不動産取引は他の商品やサービスと比べて「価格変更や価格交渉が多い」という特徴があり、実際に売出価格が販売途中で変更されることや、売出価格と成約価格が異なるということが頻繁に起こるのです。
したがって、この仕組みを理解することによって「どのような物件であれば交渉余地があるのか」、また「検討している物件が交渉できるタイミングなのか」といったことが判断しやすくなります。
本記事で主にお伝えしたい物件の交渉ポイントは下記のとおりです。
- 法人売主と個人売主では交渉のポイントが違う
- 法人売主は建物完成後の物件が狙い目
- 個人売主は売り出し後3ヶ月が交渉のタイミング
- ライバルがいるということを意識する
不動産は高額商品であるため、少しの行動で大きなお金が動く可能性があります。賢くマイホームを手に入れるためにも、本記事をぜひ参考にしてください。
売主が法人か個人か
物件を見るときに注目すべきは「売主が法人であるか、個人であるか」ということです。
この法人売主か個人売主かによって、交渉の可否やタイミングなど判断すべきポイントが異なります。
法人の場合
売主が法人である場合、次の2つの場面が価格交渉しやすいタイミングと言えます。
- 建物完成後、時間が経過している
- 法人の決算期前月・当月である
新築物件の場合、売主のほぼ全ては法人(不動産会社)です。
新築マンションの協力者住戸が売り出される場合など、まれに個人が売主である場合がありますが、そのようなケースを除いて、新築物件は価格交渉できるか否か判断しやすい傾向があります。
一つ目に「建物完成後、時間が経過している物件」です。
言い換えれば「売り残り物件」です。営利組織である法人は、建物完成後は資金回収を急ぐ必要があるため、なるべく早く売り抜こうとします。そのため、検討者からの価格交渉に応じる可能性が高いのです。
特に新築マンションは価格交渉がしやすいと言えます。
新築マンションは、建物が完成する前から販売するいわゆる「青田売り」が一般的です。
不動産会社の事情として、マンション開発は大きな支出が伴うため、その事業リスクや金利負担を極力減らす必要があります。そのためには、建物完成前になるべく沢山販売し、建物完成と同時に一気に資金回収することが求められるのです。
新築戸建てにも同じことは言えますが、戸建ては建物完成後から売り出すことが多く、事業費も少ないため、マンションと比べると期間に多少余裕をもって販売している不動産会社が多いです。
2つ目に「法人の決算期前月・当月」も価格交渉のタイミングとしては狙い目です。
不動産会社が値引き交渉に応じる理由として「決算対策」という事情があります。
この決算が良ければ株主や金融機関からの評価も高くなるため、組織としては期中の決算内容をなるべく良くするために、決算当月や前月は物件を売り急ぐ会社が多くなるのです。
また社員個人としても、決算時点の販売成績で給与が変動する会社も多いため、この時期の価格交渉には、販売担当者も多少協力的になってくれることが期待できます。
個人の場合
売主が個人の場合、売却に至った事情や価格設定がさまざまであるため、法人売主と比べると価格交渉の可否やタイミングが読みにくい特徴があります。
ただし、その中でも下記2つの物件は比較的に価格交渉しやすいと言えます。
- 売り出し後3ヶ月が経過目前の物件
- 売主が買い替えを前提としている物件
個人売主の場合、「売り出し後3ヶ月が経過している物件」は価格交渉できる可能性があります。
個人売主の物件は、仲介会社が売却活動の依頼を受けていることがほとんどです。この仲介会社への依頼を行う際には、売主は仲介会社と「媒介契約」を締結しており、その有効期間は一部を除いて3ヶ月と定められているのです。
そのため、特段売り急ぐ事情が無い物件は、売り出し後3ヶ月を目処に価格を改定する可能性があることにくわえ、3ヶ月経過目前である場合は仲介会社としても媒介契約を継続できるか不明であるため、売主への価格交渉に協力的になる傾向があるのです。
2つ目として「売主が買い替えを前提としている物件」です。
買い替えを前提としている場合、売主は売却を急いでいる可能性が高いです。
特に、買い替え先の物件を既に契約しており、現在所有している物件の売却代金を買い替え先の代金として充当する様な場合は、買い替えの全体的な資金計画さえクリアしていれば多少希望額を下回ったとしても売却を決断してくれる可能性があるのです。
ただし、買い替え前提の物件は、そもそも売り出し時点で価格を下げている場合も多く、全ての物件に当てはまるとは言えないため注意が必要です。
価格交渉における2つの注意点
ここまで価格交渉の可否とタイミングについて解説しました。
最後に、実際に価格交渉をする場合における注意点を2つご紹介します。
- 交渉は購入を決断してから臨む
- 価格の端数は交渉の余地あり
- ライバルがいることを忘れない
交渉を行う際に最も大切なことは「購入を決断してから臨む」ことです。
大きなお金が動く不動産取引では、売主も相応にして真剣ですし、仲介会社も本当に購入してくれそうな検討者でなければ協力的になることはありません。
なお、希望購入額は「購入申込書」への記載をもって売主に提示することが通常です。この書面に法的拘束力はありませんが、いずれにしても「この金額であればぜひ購入したい」という誠意がなければ円滑な交渉が難しい場合が多いです。
そして「購入検討者にもライバルがいる」という意識も重要です。
物件が良ければ、当然にして売出金額で購入したい検討者も現れます。価格交渉をするということは、それだけ購入可能性が低くなるリスクを認識する必要があるのです。
せっかく良い物件に出会ったのに関わらず、交渉したことで購入できないことは避けたいところです。その交渉に価値が本当にあるのか、慎重に考えてから判断しましょう。
おわりに:価格交渉成功の確率は物件によって違う
以上、価格交渉しやすい物件の特徴とタイミング、そして交渉時の注意点について解説しました。
法人売主の物件は、個人売主の物件と比べると交渉可否の判断がしやすく、タイミングも見計らいやすいという特徴があります。
一方、個人売主の物件であっても、売り出し後3ヶ月を経過した物件は価格改定を検討している可能性が高いため注目すべきと言えます。
ただし、交渉に臨む場合は誠意をもって行うことが重要です。また購入検討者にもライバルがいることを意識し、そもそも購入できないという状況にならぬ様、十分注意しましょう。
最終更新日:
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この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。