不動産を購入するためにはいくつかのステップがあります。
その中で「購入申込書の提出」は購入意思を売主へ伝え、条件交渉を始める重要な場面です。
購入申込書には、申込者に関することや売買価格に関すること、スケジュールに関することなど、買主側から売買条件を提示します。
基本的には仲介会社が記載方法をアドバイスしてくれますが、ここでの記載内容がその後の手続きに大きく影響するため、ご自身でもしっかり理解しておくことが重要です。
本記事の主な内容は以下のとおりです。
- 購入申込書は「この条件で買いたい」と意思表示する書面
- 購入申込書は買主選定の判断材料となる
- 購入申し込みキャンセルによるペナルティは無い
- 安易な購入申し込みは禁物
今回は購入申込書に関する基本知識や書き方、注意点などを詳しく解説していきます。
不動産の購入申込書の基本知識
まずは、不動産の購入申込書の基本知識を押さえておきましょう。
購入申込書とは?
購入申込書とは、買物件の購入意思を明示するとともに売買条件を提示するための書面です。
売買条件には、売買価格や契約時期、ローン特約など、買主側から購入に関する一方的な条件を記載します。
この売買条件に対して売主が合意すれば、売主から買主へ「売渡承諾書」を差し入れることが一般的です。
一方、買主からの条件に売主が納得できない場合は、その時点から仲介会社を通じて条件交渉を行います。
申込者が複数いる場合は、申込者の属性や購入申込書の条件内容を基に買主の選定を行います。
購入申込書を使うタイミング
購入申込書を提出するタイミングは「物件の購入意思が決まったとき」です。
原則的に、購入申込書が提出された場合、売主側は「商談中」として他の検討者の内見を断ったり「一番手あり」として既に購入申込書が提出されていることを周知します。
つまり、購入申込書には、他の検討者の購入を阻む一定の抑止力があるため、本当に購入したい物件が見つかった際は、なるべく早く購入申込書を提出することが望ましいと言えます。
不動産の購入申込書の書き方
気に入った物件に出会ったら、購入申込書はなるべく早く提出することが重要です。
そのため、土壇場で慌てることのない様に、どんな内容を記載するのか、事前に書き方について把握しておきましょう。
記載する提示内容は主に8つです。
- 申込者の提示
- 対象物件の提示
- 契約日の提示
- 購入価格の提示
- 手付金の提示
- 決済・引渡し日の提示
- ローン有無と条件の提示
- その他条件の提示
申込者の提示
購入申込者の住所、氏名および生年月日を記載します。なお、住所は原則住民票に記載のものを使用しましょう。また、押印欄もありますが、こちらは認印で構いません。
対象物件の提示
購入物件の所在を明示します。マンションの場合はマンション名や部屋番号なども記載し、なるべく物件の特定ができるところまで記載しましょう。
契約日の提示
希望する契約日を記載します。契約日は、購入申込書の提出から1週間後程度に設定することが一般的です。当然、売主の都合もあるため、記載日とおりに設定されるとは限りませんので、あくまで目安とし認識しておきましょう。
購入価格の提示
希望する購入価格を記載します。売出価格よりも低い価格を記載すれば、実質的に価格交渉をすることになります。
もちろん、売出価格をそのまま記載すれば買主としての優先度は上がるため、人気物件の場合は購入価格をどのように記載するかは慎重な判断が求められます。
手付金の提示
契約締結時に差し入れる手付金の金額を提示します。手付金は物件価格の5~10%で設定することが一般的です。
手付金があまりに低すぎる場合は売主の心証を害してしまう可能性があり、買主の選定対象から外されてしまう場合もあるため注意が必要です。
少なくとも100万円は必要と認識しておきましょう。
ローン有無と条件の提示
住宅ローンを利用する場合は、その有無も提示します。
あわせて借入予定金額や利用する金融機関、ローン特約の期日なども記載します。
ローン特約とは、買主のローン融資の承認が得られない場合、契約を解除する特約です。
このローン特約を認めるかは売主の判断となりますが、住宅の売買取引においては広く一般に使用されている特約です。
その他条件の提示
書面の記載欄のいずれにも該当しない特記事項がある場合に記載します。
特段ない場合は「特になし」と記載します。
不動産の購入申込書を渡したら、キャンセルはできなくなる?
結論的に、購入申込書の提出後にキャンセルすることは可能です。
また、購入申し込みをキャンセルしたからといって、金銭的な罰則等も発生しません。
逆に言えば、売主から売渡承諾書を受け取った後、売主からキャンセルされた場合においても、売主への罰則はありません。
売主・買主にペナルティが発生するのは、あくまで売買契約を締結した後です。それまでは信義則に従って手続きを行っているのです。
また、仲介手数料も成約報酬であるため、購入申込み時点で仲介会社への支払いが発生することはありません。
▼仲介手数料の仕組みについてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
仲介手数料無料は危険?中古マンション購入の際に誠実な不動産会社を見極める5つのポイント
不動産購入申込書の注意点
購入申込みをする際には、以下3つのポイントに注意しましょう。
- 購入の意思が固まってから提出する
- 記載内容はなるべく充実させる
- 2番手・3番手が発生する可能性がある
購入の意思が固まってから提出する
購入申込書は購入の意思が固まってから提出しましょう。
申し込み後のキャンセルにペナルティが無いからといって、安易な購入申込書の提出はご法度です。
売主のみならず仲介会社も真剣です。少し気が変わったからと言って簡単にキャンセルしてしまえば、その後は顧客として扱いが劣後する可能性が高いです。
記載内容はなるべく充実させる
売主が買主を選定する際、購入申込書の充実度は重要な判断材料となります。
内見に売主が立ち会っていない場合、売主は購入検討者の顔も見ず、この書面に頼って買主選定を行わなければなりません。
そのため、安易な購入申し込みではないか、購入に問題はないか、決済まで問題なく手続きを進めることができる相手か、この判断をしてもらうためにも、購入申込書の記載が充実していることが重要なのです。
2番手・3番手が発生する可能性がある
人気物件であれば、2番手・3番手まで購入検討者がいることは珍しくありません。
したがって、一番早く購入申込書を提出したからといって、条件面で劣後している場合は2番手・3番手の購入検討者が買主として選ばれる場合もあります。
購入申込書を提出する際には「タイミング」と「条件」のバランスがとても大切です。
これらを慎重に判断し上手に購入申込書を利用するためには、仲介会社の戦略が大きく影響します。この点においても、仲介会社選びは非常に重要となってくるのです。
おわりに:購入申込書は「タイミング」と「条件」が重要となる
購入申込書の提出は、購入ステップの中でも特に重要な場面です。購入申込書とは、買主が物件の購入意思を明示するとともに売買条件を提示するための書面です。この書面には法的な拘束力はなく、申込み後にキャンセルしても金銭的な罰則等は発生しません。
ただし、一番早く購入申込書を提出したからといって、条件面で劣後している場合は2番手・3番手の購入検討者が買主として選ばれる場合もあります。
そのため、提出の「タイミング」と記載する「条件」については特に注意しておく必要があります。
この記事を監修した人
スターフォレスト代表取締役
増田浩次(ますだこうじ)
埼玉県出身。親族の大半が不動産業界を営んでいたことから、自身も不動産業界へ入って30年近くが経ちます。モットーは、お客さまに喜んでいただけるような的確な提案をすること。お客さまには物件の良いところも悪いところもすべてお話しています。
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、損保募集人資格を所持しておりますので、住宅ローンや資金計画のご相談・アドバイスもお任せください。